米国STABLE法案がもたらす安定コイン業界の大変革、最大の恩恵を受けるのはCoinbaseか
2025年4月2日に米国下院金融サービス委員会で可決された「STABLE法案(Stablecoin Transparency and Accountability Act)」が、安定コイン(ステーブルコイン)市場に大きな影響を与える見込みだ。4月17日、ブロックチェーンデータ企業のNansenは、同法案による潜在的な勝者を特定したレポートを公開。その中で、Coinbase、PayPal、Visaなど、既に規制準拠に力を入れている企業が最大の恩恵を受ける可能性が高いと指摘された。
STABLE法案の主な目的は、ステーブルコイン保有者の保護、発行体の透明性の確保、そして米ドルの国際的な役割の強化にある。法案の規定では、現金または米国財務省証券による全額準備を義務付け、保有者への利息支払いを禁止。また、発行体は連邦公認の銀行や州信託会社、あるいは通貨監督庁(OCC)により規制される企業である必要がある。
これらの要件により、既に規制を遵守している企業は市場で有利な立場を確保できる見通しだ。中でも注目されているのが、CircleのUSDCステーブルコインを主要に取り扱うCoinbaseだ。USDCは既に米国規制の方向性と合致しており、欧州のMiCA規制もクリアしていることから、ユーロ建てステーブルコイン市場でも支配的な地位を築いている。
PayPalもまた、Paxosと共同で発行したPYUSDにより有望な候補とされている。現在の市場シェアはわずか0.38%だが、STABLE法案が施行されれば、PayPalの広範な決済サービスにPYUSDを組み込むことで大きな成長が期待できる。
その他、VisaやMastercardといったクレジットカード大手も安定コインの実験を進めており、Visaは既にUSDCを使ったカード決済のテストを行っている。今後、ステーブルコインを自社のコアサービスに組み込む動きが加速する可能性がある。
一方で、トランプ系のWorld Liberty Financialが発行した新興のUSD1ステーブルコインは、レポートには取り上げられなかった。技術的には要件を満たしているものの、CoinbaseやPayPalのような強固なエコシステムを持たない点がネックとなっている。